PLMの本質と投資効果

Posted on May 6, 2018 in blog

PLMの本質と投資効果

 

 

最近、PLMとは何か?PLMを経営者にどのように説明したらよいか?投資効果をどのように考えたらよいか?といった相談を受けます。1月2月は新年度活動のために経営者報告の相談が特に多くなる時期です。そこで感じたのが、PLMは概念が広すぎて活動の本質が見えにくくなっており、世間で認知されている内容に疑問を感じる部分も多です。数回にわたり、PLMをどのように考え、投資効果を出していくべきかについて触れたいと思います。

 

| PLM導入の2つの違和感

 

PLMとは、Product Lifecycle Managementの略で、「製品企画・設計・製造・販売・保守までのライフサイクル全般にわたって製品を総合的に管理する手法」といった感じで定義されることが多いです。しかし、様々な企業の導入支援を通じて大きく2つの違和感を感じています。

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 1つ目の違和感は、「 PLMがBOMやPDMと同じような取り組みになっている 」ことです。今まで、技術開発領域において、BOM(部品表)やPDM(技術ドキュメント管理)などの取り組みがされてきましたが、PLMがそれらと殆ど変わらない取り組みになってしまっていることです。今までのBOMを、設計部品表(E-BOM)だけでなく、そこから発展してE-BOM/M-BOM連携に取り組んだり、サービスBOMへの展開などです。BOMをライフサイクル通して設計以外でも活用し、製品情報を一気通貫で管理したり、変更管理を行ったりするという取り組みをPLMと称して活動していることです。確かにライフサイクルの視点が加わったのかもしれないが、それはあくまでのBOMの取り組みの延長でしかなく、それが本当にPLMと言って良いのか?それが本質なのか?と疑いたくなります。また、BOMにかぎらず、CADデータや図面データなどをライフサイクル通して設計以外でも活用しようという動きも同様にPLMと称して活動しているケースが見かけます。

ひどいケースだと、過去にE-BOM導入に失敗していて、再度E-BOM導入にチャレンジがしたいが、同じBOM-PJの名だと経営者が納得しないため、「PLM」と冠を変えてBOMのPJを進めようとしているケースもあります。そんな騙したような取り組みをするから本来のPLMというものが理解されてないと危惧しています。

 

2つ目の違和感は、「 PLMが経営者からみたら現場のマニアックなデータ管理の取り組みになっている 」ことです。少し言い換えれば「 PLMが経営管理の仕組みになっていない 」ということです。設計領域と会計領域の2つの領域で改革の支援をしていて常々思うことは、設計領域のシステムは、経営者の関心が低く、大きな予算が付かないということです。会計領域のコンサルティングでERPパッケージの導入支援なども行いますが、ERPだと数十億規模のPJとなることは多いです。数百億規模のPJを担当したこともあるくらいです。しかし、設計システム(BOM/PDM/PLMなど)になると、数億でビッグプロジェクトになってしまうという状況です。PLMとERPでは、1桁も2桁も予算が異なるのです。ここには大きな違和感を覚えます。設計段階は製品付加価値・製品コスト・利益ポテンシャルが全て確定してしまうという重要な局面です。その重要な局面を支えるシステムの予算の優先順位が低いことが正しいのでしょうか?Excelツールが横行していていいのでしょうか?

逆に、なぜERPにはそれだけのお金が着くのでしょう。それは、会計と連動しているからです。会計というのは経営者にとって非常にわかりやすく、重要なデータです。事業において本来重要なのは、製品データだったり、付加価値を支える技術文書なのだと声を大にして言いたいですが、経営者にとって会計データに意識が向いてしまうのはやむを得ないでしょう。ERPは財務会計・管理会計の数字を正確に迅速に提供するシステムだから経営者もお金を付けやすい。しかし、PLMとなると、BOM、PDM、E-BOM/M-BOM連携、設計変更管理、ナレッジ共有、サービスBOM、技術資産の管理/活用など、わかりにくい。管理系役員からすると、会計と関係ないため、「開発現場のマニアックなよくわからない仕組み」「開発も工数削減しなければいけないから、開発現場の効率化の便利ツール導入」といったくらいにしか思われていないのです。これでは経営者のための経営管理のシステムとしての位置づけにならず、お金も付けてもらえない状況から打破できません。しかし、「 設計開発段階でコストの約80%が決まる」というキーワードを聞いたことがあると思いますが、それだけ設計段階での意思決定会計の位置づけが大きいということのなのです。だからこそ、PLMは会計の仕組みとしての位置づけにする必要があり、経営管理の重要テーマとして認知されるようになるのです。

 

|会計と連動させた経営管理システムとしてのPLM

 

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 ERPとPLMを2大巨頭して、経営管理の仕組みとして位置づけることが重要なコンセプトとなります。ERPはヒト・モノ・カネの経営資源を管理する統合パッケージとしながら、(実際原価に連動しない部分の)設計領域は対象外となっている。また、PLMもライフサイクルと言いながら、所詮は設計システムの延長線上でしか無い。ERPもPLMも統合とか一気通貫と言いなが一部分しか対象としていない。改めて今、それぞれをどのように位置づけるかを再考すべき時期が来ています。ERPとPLMをそれぞれどのようなコンセプトで考えればよいのか?どのように連携を考えればよいのかは、次回「PLMの本質と投資効果 その2」で触れていきたいと思います。

 

2018年05月06日

心をこめて・・・・ プリベクト 北山一真