Posted on May 15, 2018 in blog
様々な企業で、業務改革のお手伝いをしていて、「改革」の定着が難しいと感じさせられます。PJの目標期日までに新業務を定義し、経営トップに完了報告をするのは、期間が決まっているため短距離走のようにがむしゃらに頑張ることができます。しかし、その後の業務定着が本当に難しいと感じます。多くの人は「改革」や「新しい業務」には抵抗感があり、受け入れ難いのだと思い知らされます。
講演や改革プロジェクトの中でよく口にするキーワードがあります。「 ”できない” 40点を気にして、”できる” 60点を捨てる必要がない」 という言葉です。新しいことに反対する人は、”できない” ことばかりに目がいく思考をもっています。例えば、現状が10点の仕事があったとします。そこに60点の改革案を出した場合に、「この案では、AAAに対応できない」「BBBの場合が考慮されていない」「これでは不十分だ」と、足りない・できない40点ばかりに目がいきます。結果、否定的な意見が多いので見直しましょう。となり、改革案が却下され、現状の10点のままになってしまっているということです。せっかく、現状の10点から60点に、50点も改善が期待できるにも関わらず、できない40点ばかりを気にして、できる60点を捨ててしまっているのです。
世の中には、100点の業務やシステムは存在しません。無論、60点で満足してはダメで70点,80点とより良いものを目指す必要があります。しかし、60点の案が出た時に、60点をしっかり評価していかないと、次の70点・80点の議論になっていきません。重要なことは、100点満点から減点思考になるのではなく、あくまでも現状からの加点思考になることです。比較優位の発想になるべきです。 ”できない” 40点を気にして、”できる” 60点を捨てる必要はないのです。人は無意識に減点思考になってしまう場合があります。改革を進める際には、現状を出発点にした加点思考を意識してもらいたいです。
エベレット・M・ロジャースが提唱した「イノベータ理論」というものがあります。イノベーション普及に関する理論で、新商品の購入を早い順に五つに分類したものです。これは、新業務定着や改革推進に関しても同様に当てはまると思います。また、イノベーションを普及させるためには、新しいもの・ことに対して積極的な ”イノベーター” や ”アーリーアダプター” が重要であると言われています。イノベーター・アーリーアダプターを合わせると全体の16%になり、その16%に普及すると、全体普及へ加速されるという考え方です。これを「キャズム理論」と呼びます。
新しいこと(改革)の定着についても、イノベーター理論に則り、組織を5分割して考えることができます。最初は、全体の2.5%(イノベーター)の人により、改革を立ち上げたり推進したりします。そして、次の13.5%(アーリーアダプター)により改革内容を拡散し、評価をしていくことになります。いかに、最初の16%に定着させるかが大きな鍵となります。また、一番最後に残る16%(ラガード)は、何をやっても改革には反対する人は必ず残るので、ラガードの声に負けないことです。このようにイノベーター理論を参考にしながら、改革の組織展開・定着を諦めずに実行してみてください。
最後に、ものごとを、常に ”変” える人は、”変”人 だと思っています。逆に、改革を推進する人は、「自分は全体のたった2.5%に属する ”変” わった人間だ」と認識し、周りの人と接する必要があります。「組織のためになぜ前向きになれないのか!」「なぜ、現状のままで良いというのか!」「否定的なことを言ってても、何も変わらないのに!」と思わずに、我慢をし続けるのです。そうやって、一人でも多くの ”変” 人 が産まれることを願っています。そして、一つでも多くの仕事が改革されることを願っています。
2018年05月14日
心をこめて・・・・ プリベクト 北山一真