PLMの本質と投資効果(その2)

Posted on May 29, 2018 in blog

PLMの本質と投資効果(その2)

 

 

以前に書いた記事( PLMの本質と投資効果 ) の続きを記載したいと思います。前回の記事では、PLMを会計と連動させることで、経営管理の仕組みとなり、経営としての投資効果を狙っていけるということになります。なので、PLMを、BOMやPDMの延長の取り組みで考えると、経営者からは” 開発現場のマニアックなツール導入 ” としか見えず関心が持たれない場合があります。経営管理の位置づけで取り組むことで、ERPと並ぶ2大経営管理の仕組みにしていくのです。

 

| 本当の利益は見えているのか?

 

今回は、PLMをどのようなコンセプトで扱っていくべきかを解説します。そのためには、経営として最も重要な「利益」の見える化ができてるかという問題を問わなければなりません。多くの企業で見える化できている利益は、以下の図にある「期間損益」(縦の利益)になります。今年度いくら儲かったか?半期でいくら儲かったか?というものになります。組織の器の評価を行っています。一定期間内に組織運営が良かったか、組織力の評価を行うのです。そのうち外部からの評価は財務会計になります。無論、この期間での利益評価は、組織力を測る上では避けて通れないし非常に重要な要素です。しかし、それだけで良いのでしょうか?企業の本質は、事業です。製造業においては、市場に求められる製品を提供できたのか?顧客が求める要求仕様に最適に設計できる技術力を要しているのか?そのような技術力・製品競争力・事業力を利益に転換できているのかを評価する必要があります。そう考えると、以下の図にある「プロジェクト損益」(横の利益)が重要となるのです。このプロジェクトでいくら儲かったのか?この製品グループや機種でどのくらい儲かったのか?が企業の本質である事業そのもので得た利益を見える化する必要があるのです。改めていいますが、企業の本質は事業です。事業そのものが良くなければ継続しません。事業力を測れる仕組みが必要なのです。

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|プロジェクト損益の仕組みがPLMだ!

 

利益には、期間損益(縦の利益)とプロジェクト損益(横の利益)の2つあり。企業力と事業力を測っていく必要あります。どちらが欠けても経営管理としては不十分であり、2つの利益を見ながら企業の舵取りが重要となります。そのうち、期間損益は多くの企業ではすでに見える化できています。世の中にあるほとんどのERPや会計パッケージはこの期間損益の仕組みです(※1)。それは財務会計があるため90年代後半から急速に導入が進みました。しかし、プロジェクト損益は多くの企業では導入がされていません。財務会計的にも経理的にもプロジェクト損益は義務ではないため、明確な問題意識と積極的に会計を改善する意識がないと行動が取れないです。事業力を把握できる仕組みがない中で正しい経営ができるのでしょうか?適切な経営管理のためにプロジェクト損益の仕組みが必要なのです。そして、このプロジェクト損益を見える化する仕組みこそが、PLMになるのです。

※1:無論、ERPパッケージの中にプロジェクト損益のモジュールや機能があったりするが、機能足らずな場合が多い。また企業でも導入されていないことが多い。

 

 

 

|PLMが開発のマニアックな仕組みから経営の仕組みへ

 

PLMをプロジェクト損益の見える化の仕組みとすることで、前回(その1)のときに述べた疑問が解決できます。1つは開発現場のマニアックな仕組みのイメージから脱却できるということです。「PLMは、製品情報をライフサイクルで管理するために、E-BOMを適切にM-BOMに変換し、・・・・」なんて説明しても、経営者からしたら「で?何人へるの?」みたいな回答しか来ません。PLMを現場の工数削減のための便利ツールと認識されがちです。「BOMデータが・・・」「図面データを・・・」「変更管理で設計からサービスへのECOを・・・・」なんて開発系役員くらいしかわかってくれません。経営者にとって会計は非常にわかりやすい経営管理の仕組みです。会計は様々な活動(単位)を統一尺度で評価できるもののため、良いか悪いか別として会計の数字に振り回されます。だからこそ、会計は経営管理として関心が高くなります。だから、PLMを会計と連動させることが必要で、その切り口として「PLMとは、プロジェクト損益の見える化のためのツール」そうすることで、ERPとPLMが経営管理の2大巨塔として名を連ねることになります。

 

ERPは、期間損益や実際原価を見える化する仕組みであり。組織運営の効率性を測るために、ボリュームマネジメントを中心に企業力を高めていくための仕組みと位置づけられます。また、PLMは、プロジェクト損益や投資回収を見える化する仕組みであり、製品付加価値を高めるためのスペックマネジメントを中心に事業力を高めていく仕組みと位置づけられるのです。以下の図にあるような、ERPとPLMが経営の両輪となり、適切に企業・事業を投影し、正しい意思決定を促す仕組みにしていく必要があるのです。

 

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今回はPLMを新しいフレームで捉えることで、現場の便利ツールから経営管理の仕組みに昇華できるかを説明しました。では、このような考え方をどのように説明したら経営者に納得してもらえるのか?経営者がしやすいのかについては、次回(PLMの本質と投資効果 その3)に触れていきたいと思います。

 

2018年05月29日

想像力をもって・・・・ プリベクト 北山一真