個別受注のPLM(その2)

Posted on Jul 24, 2025 in blog

個別受注のPLM(その2)

 

 

 

 

前回( 個別受注のPLM(その1) )にて、個別受注企業においてP-BOMの重要性を説明しました。現在のPLMパッケージの多くは、企画量産型企業を前提に構築されているため、P-BOMへの対応が難しいケースが多い印象です。そしてP-BOMを考えるうえで欠かせないのが見積管理と支給品管理です。今回は見積管理についてこれについて補足しておきたいと思います。

 

| 設計が主体となる見積管理

 

個別受注企業において、(良いか悪いか別として)設計部門が調達品のメーカー選定や技術仕様の調整、大まかな価格調整まで行ってしまいます。これは企画量産企業からするとありえない役割分担だと思います。技術部門がメーカー選定や価格についてまで口を出すのかと。個別受注の場合は、調達品も特注品になることが多いため、どのメーカーはどのような仕様なら受けられるか?どのくらいの納期でできるか?どの程度の価格か?などは設計者が直接メーカーとやり取りすることになります。良いか悪いかは別として、特注品のため技術者でないと調整ができないのが実態です。そうなると、設計者は手配するための発注仕様書を作成し、それに対するメーカーからの概算見積書(正式なものは最終的に調達とのやり取りで提出)を受領し、大まかな価格は合意しておくことになります。それらのやりとりをP-BOMを用いてデータ管理しなければなりません。スペックの調整次第では、E-BOMの部品や構成の見直しが必要となります。設計者が調達業務の一部を担っているため、E-BOMとP-BOMを駆使して、スペックの調整や管理が必要なためPLMでの管理が避けて通れないので

また、この範囲をPLMにて管理できれば、調達品のスペック(諸元)と見積価格のデータ管理が可能になります。諸元と価格データを機械学習で多変量解析を行えばコストテーブルの構築につながります。コストテーブルは原価企画を促進させるには避けて通れません。( 重回帰・Lasso回帰・Ridge回帰・SV回帰・XGboost回帰などの機械学習を用いたコストテーブルについてはマニアックなテーマですが別途解説するつもりです )

いくつかのPLMパッケージでは、サプライヤーマネジメントの機能が準備され、メーカー毎の仕様書や見積回答などのデータ管理ができるデータモデルを採用しています。E-BOMで扱う品目(PN)の下位概念としてメーカー毎の品目(メーカー品目)を紐づけることができるというものです。そして、メーカー品目の部分をクラウドを用いてメーカーに開示し、自社PLMに対してサプライヤーが直接データ入力などをさせるということができます。メールを使ったり、調達専用に使っているクラウドなどを廃止することが可能で非常に有効的です。それらのこともあり個別受注企業ではP-BOMが欠かせないのです。

 

 

| SAPで忘れ去られる見積管理

 

見積管理でよく悩む点は、ERP(SAPのMMモジュールなど)にも見積管理があるということです。そことの切り分けはPJスコープとして悩ましい点です。購買依頼や購買発注データとのつながりを考えると、見積管理もSAPを用いた方がいいのでは?という意見もよく出ます。見積管理部分は、PLMとERPで重複して機能を持ってしまっています。

(私がPLM側なのでポジショントーク的に聞こえるかもしれないが)見積管理はPLMで行うべきだと思っています。理由は3点。1点目は前述した通り設計部門が仕様調整し、E-BOMとP-BOMをいったりきたりする必要があります。そう考えるとE-BOMに近い領域でデータ管理するのが現実的です。2点目は、見積管理で重要なのはスペック(諸元)の管理です。しかしSAPは見積管理はあくまでも伝票と価格の管理で、スペックを管理するという視点がありません。最後の3点目は、SAPで見積管理機能があったとしても実際に使われていることが少ないということです。SAPの購買管理モジュールはあくまでも支払い(買掛金計上)に関わる購買依頼・購買発注・入庫部分を使うということがメインになってしまいます。支払いが伴わない見積管理は、「余力があればデータ入力してください。必須ではないです。」という位置づけでの導入になってしまうことが多いです。ものづくり企業として製品情報をマネジメントする視点からみたら購入品のスペック(諸元)の管理は重要な要素ですが、ERP関連では軽視されてしまいます。そういった3点の理由から見積管理はPLMで行うべきだと思っています。

 

PLMはE-BOM、M-BOM、BOPの議論で終わることなく、P-BOM、出荷BOM、サービスBOM、メンテナンスBOM、Cost-BOMなど様々な目的別BOMで企業の背骨を形成するのです。企業全体をつなぐデータモデルの議論に目を向けてもらえればと思います。

 

 

 

2025年07月23日  プリベクト 北山一真

 

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